レポート

2014年9月-Vol.220

まとめ

今月のポイント

今月30日に、8月の鉱工業生産指数が発表されます。7月の指数は、前月比+0.2%と市場予想(+1.0%)、生産予測調査(+2.5%)を下回り、6月の▲3.4%から上昇に転じたものの反発は弱いものとなりました。指数は今年1月をピークに1ヶ月ごとにマイナスとプラスを繰り返していますが、マイナスは大きく、プラスは小さい状況が繰り返され、均してみれば減少傾向が続いています。元々消費増税の影響から生産の落ち込みが予想されていましたが、想定以上に弱い状況です。製造工業生産予測調査では、8月が+1.3%、9月が+3.5%と持ち直すことが予想されていますが、これまでも予想を下振れる傾向があり、今後の動向が注目されます。

市場動向
国内債券 ファンダメンタルズ面からは金利上昇圧力が掛かりやすいものの、地政学的リスクや日銀の国債買入策の影響により、レンジ内で横這い推移すると予想する。
国内株式 国内の景気減速への懸念や海外のリスク要因などから上値は重いものの、中間決算期末にかけての業績上振れ期待を背景に小幅な上昇を予想する。
外国債券 <米国>景気の順調な回復から金利は徐々に上昇すると見込むものの、上昇局面では買い需要が強く、上昇幅は限定的となろう。
<欧州>景気の下振れ懸念に加えて、低インフレの長期化見通しから追加緩和観測が高まり、低位で方向感のない動きになろう。
外国株式 <米国>地政学的リスクへの懸念は継続するものの、堅調なマクロ経済指標、企業業績の改善期待等を主な材料に小幅な上昇を予想する。
<欧州>追加金融緩和期待は支援材料だが、ウクライナ情勢の混迷が懸念されて振れの大きくなる局面が予想され、月間では横這いとなろう。
為替市場 米利上げの前倒しが意識されドル高円安圧力が掛かりやすいが、地政学的リスクが燻るため緩やかな円安となろう。米欧の景気格差に加えて、金融政策の方向性の違いが意識され、ユーロの対ドルでの下落基調が継続するだろう。
虫眼鏡

『成田山新勝寺の探訪記』

ポイント

今月30日に、8月の鉱工業生産指数が発表されます。7月の指数は、前月比+0.2%と市場予想(+1.0%)、生産予測調査(+2.5%)を下回り、6月の▲3.4%から上昇に転じたものの反発は弱いものとなりました。指数は今年1月をピークに1ヶ月ごとにマイナスとプラスを繰り返していますが、マイナスは大きく、プラスは小さい状況が繰り返され、均してみれば減少傾向が続いています。元々消費増税の影響から生産の落ち込みが予想されていましたが、想定以上に弱い状況です。製造工業生産予測調査では、8月が+1.3%、9月が+3.5%と持ち直すことが予想されていますが、これまでも予想を下振れる傾向があり、今後の動向が注目されます。

今月の主なポイント
9/11 7-9月期法人企業景気予測調査・・・企業の景況感に改善がみられるか
9/16 (米)FOMC(連邦公開市場委員会)・17日まで
・・・イエレンFRB(連邦準備理事会)議長の会見に注目
9/18 (ユーロ)貸出条件付き長期資金供給オペ・・・入札額がどの程度となるか
9/30 8月鉱工業生産・・・上記参照
9月中 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)運用見直し
・・・基本ポートフォリオの変更が発表される可能性
鉱工業生産指数

国内債券

指標銘柄/新発10年国債
8月の国内債券市場

8月の債券市場は、小幅上昇(金利は低下)した。10年国債利回りは、米国雇用統計が市場予想を下回ったことや地政学的リスクの高まりから0.5%近辺まで低下した。その後もウクライナ情勢悪化や、ECB(欧州中央銀行)による追加金融緩和期待が高まったことから海外長期金利が低下したことを受けて、0.4%台後半まで低下した。

月初、10年国債利回りは、米国雇用統計が市場予想を下回ったことや、ウクライナ情勢の悪化、米国によるイラク空爆を受けて海外長期金利が低下したことから、0.5%近辺まで低下した。中旬は、超長期債の入札が順調であったことや、4-6月期のGDP成長率が消費税増税の影響を受け大幅なマイナスになったこと、ウクライナ情勢を巡る緊張の高まりを受けて海外長期金利が低下したこと等から、一時0.5%割れまで低下した。下旬は、イエレンFRB(連邦準備理事会)議長のジャクソンホールでの講演や、FOMC(連邦公開市場委員会)議事録の内容がややタカ派と受けとめられ、米国長期金利が上昇したことにより0.5%台前半で推移したが、月末に掛けては、ウクライナ情勢の一段の悪化やECBによる追加緩和期待の高まりから海外長期金利が低下したことを受け、0.49%まで低下し終了した。

イールドカーブは、懸念されていた超長期ゾーンの入札を順調に消化したことから長期ゾーンから超長期ゾーンにかけて低下し、残存20年近辺の低下幅が大きくなった。
信用スプレッドは、需給環境は良好なものの、タイトニング余地は限られており、横這いでの推移となった。

9月の国内債券市場

9月の債券市場は、日米の緩やかな景気回復が金利上昇圧力となるものの、欧州の景気回復の遅れや、地政学的リスクの高まり、日銀の国債買入策の継続により金利は上昇し難く、レンジ内で横這い推移すると予想する。

9月の債券市場のポイントは、①欧米の金融政策、②地政学的リスク、③GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオの変更の動向と考える。

①(欧米の金融政策)欧州では追加金融緩和への期待が高まっているため、ECB理事会に注目が集まりそうだ。また、FOMCでも今後の金融政策への指針が提示されるか注目される。

②(地政学的リスク)ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化や中東情勢の悪化による地政学的リスクの高まりから、金利低下圧力が掛かりやすいだろう。

③(GPIFの基本ポートフォリオの変更)月内に今後のGPIFの基本ポートフォリオの変更が示されるとの見方から、その内容次第ではボラティリティが高まる局面も予想される。
イールドカーブは、日銀の国債買入策により短期・中期ゾーンは低位で安定するが、超長期ゾーンは、需給環境への思惑からスティープ化圧力が掛かりやすいだろう。
信用スプレッドは、縮小が進みタイトニング余地は限定的なものの、投資家の需要は継続しているため、横這いを予想する。

国内株式

日経平均株価225種東証株価指数(TOPIX)
8月の国内株式市場

8月の株式市場は、4-6月期決算は堅調となったものの、夏季休暇シーズンで閑散取引となる中、地政学的リスク関連のニュースで相場が上下する展開となり、日経平均株価で1.26%の下落となった。

初旬は、国内企業の決算発表が本格化する中、米国のイラク北部への空爆による地政学的リスクの高まりから急落し、日経平均は一時15,000円を割り込んだ。中旬以降は、地政学的リスクに対する過度な警戒感が一旦緩和され、米国株式の上昇や円安の動きなどを好感し、リバウンド局面となった。月末にかけては、円安一服やウクライナ情勢への警戒感などから軟調な動きとなった。

業種別には、医薬品、海運、建設などが上昇する一方で、金属製品、鉄鋼、その他金融などが下落した。

9月の国内株式市場

9月の株式市場は、国内の景気減速への懸念や海外のリスク要因などから上値は重いものの、中間決算期末にかけての業績上振れ期待を背景に小幅な上昇を予想する。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオ見直しに加え、今後の政治・政策動向に関心が高まっていくだろう。

日本の4-6月期実質GDP(1次速報)は、年率でマイナス6.8%と大幅な悪化となった。需要項目別では、個人消費の落ち込みが予想以上に大きく、設備投資や住宅投資もマイナスに寄与した。12月にかけて判断される消費税率の再引き上げは、7-9月期の実質GDPなどを確認し決定するとされているが、今後の景況感が想定通り強まっていくかどうかは不透明な状況にある。一方で、来年春に統一地方選挙を控える中、2014年度の経済成長率は政府や日銀の見通しを下回る可能性があることから、株式市場の一部では追加の金融・財政政策への期待も出てきている。

出揃った4-6月期決算は、消費増税に伴う需要の反動減が警戒されていたが、経常利益ベースで増益となり、まずまずの評価となった。主要セクターでは、電機、機械、建設などが好調であった。通期に対する進捗率は概ね前年並みの水準となり、7-9月期以降の業績拡大に期待がある。引き続き、業績面から見て日本株は海外市場に比べ相対的に割安との評価が可能であろう。

一方、今月も海外要因への警戒感が残り、上値を抑える要因として意識されよう。長期化するウクライナや中東地域の地政学的リスクの他、対ロシア制裁が欧州景気に与える影響などに注意が必要となる。但し、リスク回避の円高や原油価格の上昇に繋がらなければ、市場への影響は限られよう。また、国内では、内閣改造、GPIFの基本ポートフォリオの変更、その後の臨時国会と秋口にかけて重要イベントが目白押しとなり、株価の変動要因となるだろう。

外国債券

米10年国債ドイツ10年国債
8月の米国債券市場

8月の米国の長期金利は低下した。

10年債利回りは月初2.5%台半ばで始まったが、雇用統計が市場予想を下回ったことや、ウクライナ情勢の悪化懸念から低下基調となり、更に米軍がイラクを空爆したと伝わると2.3%台半ばを付けた。一旦はウクライナ情勢が沈静化に向かっているとの思惑で、リスク回避の巻き戻しから金利は2.4%台に戻したが、7月の小売売上高が市場予想を下回ったことや、ウクライナとロシアの緊張が再び高まると月央には一時2.3%を付けた。

その後は7月のFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨において、利上げ時期の前倒しが議論されていたことや、注目されたイエレンFRB(連邦準備理事会)議長のジャクソンホール講演が期待されていたほどハト派寄りでなかったことから、金利は2.4%台前半に戻して推移した。下旬に掛けては、同じジャクソンホールでのドラギECB(欧州中央銀行)総裁の講演により、ECBの追加緩和観測が高まったことで欧州債の金利が軒並み低下し、10年金利もそれに連れて2.3%台前半まで低下して引けた。

8月の欧州債券市場

8月の欧州(ドイツ)の長期金利は低下した。

ドイツ10年債利回りは月初1.1%台で推移していたが、ドイツの製造業受注や鉱工業生産が予想を下回ったことや、イタリアの4-6月期GDPがマイナス成長となって景気後退局面入りしたこと、ウクライナやイラク等を巡る地政学的リスクが意識されたことから低下基調となった。

更にユーロ圏の4-6月期のGDPがゼロ成長にとどまったことに加え、ウクライナ情勢の緊迫化を受けて初めて1.0%を割れた。その後1.0%近辺で推移する展開となったが、下旬に掛けては、ドラギ総裁の講演でECBによる追加緩和観測が高まったことや、引き続き地政学的リスクが懸念されたことから、欧州債全般的に金利の低下が加速し、史上最低水準となる0.8%台後半で引けた。

9月の米国債券市場

9月の米国の長期金利は緩やかな上昇を予想する。

米国経済は、マイナス成長となった前四半期の反動もあって足元高い伸びを見せている。雇用が着実に改善し、個人消費や設備投資も堅調な見通しとなる中、今後も持続的な回復基調となろう。量的緩和の終了が視野に入る9月のFOMCでは、出口戦略に関する議論も焦点となってこよう。

景気の回復に連れて金利は徐々に上昇すると見込むが、世界的に金利低下圧力が掛かる環境の下、上昇局面での買い需要が強く、地政学的リスクも意識されることから、限定的な上昇となるだろう。

9月の欧州債券市場

9月の欧州(ドイツ)の長期金利は横這いでの推移を予想する。

低水準ながらも緩やかな回復が続いていたユーロ圏経済は、4-6月期にゼロ成長に止まった。成長を牽引していたドイツがマイナス成長となる等主要国の低迷が目立つが、ロシアに対する経済制裁の強化による不透明感も加わり、今後の景気の下振れ要因となり得る。

低インフレの長期化も懸念される中、ECBによる追加緩和観測によって金利の上昇が抑えられる一方で、これ以上の低下も限定的になると思われることから、ドイツ金利は低位で方向感の無い動きになるだろう。 

外国株式

米国S&P500指数ダウ工業株30種平均ドイツDAX指数イギリスFT-SE(100種)指数香港ハンセン指数
8月の米国株式市場

8月の米国株式市場は、S&P500指数で初の2,000ポイント台となり、3.77%の大幅上昇となった。

ロシア・ウクライナの情勢が混迷し地政学的リスクへの懸念等から月初こそ急落したが、欧州に連れた長期金利の低下やISM製造業指数、雇用や住宅関連指標等の堅調な経済指標や好調な企業業績が好感され上昇に転じた。その後は、地政学的リスクの緊張一服感もあり史上最高値を更新した。

セクターでは、電気通信サービスだけが下落し、ヘルスケア、生活必需品、公益等ディフェンシブセクターが指数を上回る上昇を見せる一方、エネルギー、素材セクターが出遅れた。

8月の欧州株式市場

8月の欧州株式市場は、ロシア・ウクライナ情勢の混迷がマクロ経済、企業業績に影響を与えるとの懸念が強まり売られたが、ドラギECB(欧州中央銀行)総裁の発言から追加金融緩和期待が高まり上昇した。

全体として、経済指標は予想を下回り、イタリアがリセッション入りとなり、中核国ドイツも減速懸念が強まった。その後、米国市場の反発で買い戻されたが、上値は重い状態が継続した。国別では、イタリア、オーストリア等が売られ、一方、アイルランド、ベルギー等が買われた。セクターでは、情報技術、ヘルスケア等が買われ、一方、素材、電気通信サービス、公益等が売られた。

8月の香港株式市場

8月の香港株式市場は、0.06%の下落となった。

地政学的リスクの高まり等により下落して始まった後、香港・上海株式市場の相互乗り入れによる資金流入期待、更に中国政府による景気刺激策への期待の高まり等を背景に上昇に転じたものの、中国の主要経済指標の下振れやIPOによる需給悪化懸念等により、月末にかけて弱含んだ。

9月の米国株式市場

9月の米国株式市場は、地政学的リスクへの警戒感は継続ながら、低金利環境や堅調な景気拡大による業績改善期待等を背景に小幅な上昇となろう。

但し、7月の急落から8月の急反発でテクニカル的な割高感も継続しており、突発的な悪材料には売られやすいだろう。10月の量的緩和終了を控えて、市場が神経質となる局面も想定されるが、低金利環境が継続すれば、株高は維持されよう。

米国内需を中心に企業業績は堅調を持続すると思われる一方、ロシア・ウクライナ情勢の混迷による欧州のマクロ経済環境の減速懸念や、不動産市況減速を続ける中国経済の不透明、ドル高傾向等には引き続き注意が必要であろう。

9月の欧州株式市場

9月の欧州株式市場は、追加金融緩和期待は支援材料だが、ロシア・ウクライナ情勢の混迷が懸念されて振れの大きくなる局面も予想され、月間では横這いを予想する。引き続き足元で減速感の台頭している主要経済指標、企業業績、通貨動向、当局者の発言の他、スコットランドの住民投票等が注目される。

9月の香港株式市場

9月の香港株式市場は、中国の主要経済指標の下振れや主要企業の業績減速懸念の高まりと、中国政府の金融緩和スタンスの継続や選別的景気刺激策への期待が拮抗し、一進一退の動きとなろう。また、今月中旬に予定されているアリババの米国株式市場上場により、香港市場においても需給悪化懸念が高まる可能性も注意されよう。 

為替動向

為替(ドル/円)為替(ユーロ/円)
8月のドル/円相場

8月のドル/円相場は、円安となった。

月初、米国雇用関連の指標が市場予想を下回ったことを受けて米国金利がやや低下したため、ドルも若干弱含んだ。その後オバマ大統領がイラクのイスラム過激派に対する空爆を承認したため、リスク回避で円が買われ101円台半ばを付けたもののすぐに戻り、102円台前半での推移となった。

しかし、20日に公表された7月のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録の内容が市場が想定していたほどハト派ではなかったため、米国金利が上昇しドルも104円台半ばまで買われた。月末に掛けては、ウクライナや中東等の地政学的リスクが意識され103円台後半から104円台前半での推移となり、103円台後半で引けた。

8月のユーロ/円相場

8月のユーロ/円相場は、円高となった。

ECB(欧州中央銀行)理事会で金融政策の変更がなかったため月初は小動きだったが、地政学的リスクの高まりにより、一時136円割れまで円が買われた。その後、ドルに対して円がやや売られる中ユーロはほぼ横這いの動きであったため、ユーロ/円は一時138円台となった。

月末に掛けては、欧州の経済指標が市場予想を下回るものが続いたことや、ロシアに対する経済制裁による欧州経済への悪影響が懸念されたこと、また22日の講演でドラギECB総裁が追加緩和に前向きな発言をしたことや、ウクライナ情勢が再び緊迫化したこと等により欧州の長期金利が低下、ユーロも売られ、136円台後半で引けた。

9月のドル/円相場

9月のドル/円相場は、緩やかな円安を予想する。

米国経済の緩やかな回復基調は変わらず、FRB(連邦準備理事会)の緩和縮小姿勢にも変化はない。出口戦略への思惑が出やすくなるが、低金利政策長期化見通しと地政学的リスクを背景に米国金利の上昇が抑制され、ドルの上値は重くなろう。

一方で、下押し局面でのドル買い需要も強いことから下値も限定的になると思われる。今後、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオの変更や、対外投資の拡大観測等円安材料もあるため円が売られやすい展開を見込むが、小幅な円安にとどまるだろう。

9月のユーロ/円相場

9月のユーロ/円相場は、ほぼ横這いでの推移を予想する。

ユーロ圏の回復を牽引してきたドイツ景気に不透明感が見られ、対ロシア経済制裁の影響による欧州経済全体の回復の遅れも意識されていることや、デフレ懸念等からECBによる追加緩和観測が高まっており、足元でユーロが下落基調となっている。

米欧の景気回復度合いや金融政策の違い、地政学的リスク等から、今後もユーロは売られやすい展開が続くだろう。ユーロ/円相場に関しては、ユーロ、円ともにドルに対して弱含むと思われるため、ユーロ/円はほぼ横這い圏での動きとなろう。

虫眼鏡

成田山新勝寺の探訪記

1 はじめに
 私は8月に成田山新勝寺(真言宗智山派)を参拝しました。成田山新勝寺は、参拝者が多い寺です。平成25年の年間参拝者数は推定1,000万人超で、例年、参拝者数が日本第2位の神社仏閣です(明治神宮が第1位です)。

2 成田山新勝寺の起源について
 摂政藤原忠平に仕えていた平将門(?~天慶3年(940年))は京都の警備に従事し、検非違使になる夢を抱いていました。しかし、その夢が叶わなかったため、平将門は関東への東下後、下総国(現在の茨城県)を占領し、天慶2年(939年)に「新皇(新しい天皇)」を自称しました。これが有名な平将門の乱です。朱雀天皇の勅命を受けた京都遍照寺の僧侶寛朝は、京都高尾山神護寺(高野山真言宗)の不動明王像とともに下総国に行き、平将門調伏(ちょうぷく。仏の力で人を呪詛すること)の護摩を焚き祈りました。不動明王像は、寛朝が乱の鎮圧後に帰京しようとした時に、下総国からの退去を拒否したらしく、彼は夢のお告げで、「不動明王はこの地にとどまる。」との趣旨の、不動明王の説明を聞いたようです。そこで、朱雀天皇は下総国の国司に印旛郡公津ヶ原の地に堂を建てさせました。これが成田山新勝寺の始まりであって、「新勝」は「また新たに勝つ」を意味します。

3 平将門について
 平将門は超人的な人であったらしく、また、6人の影武者がいました。彼の身長は7尺以上で、五体は悉く鉄のようでした(「俵藤太物語」参照。)。平将門は、平貞盛及び藤原秀郷(別名で、「俵藤太」と、自称。)の連合軍により討伐されました。「将門はこめかみよりぞ切られける 俵藤太が謀にて」の歌は有名です。京都で梟首された平将門の首は瞑目せず、歯噛みを行い、復仇を誓ったそうです(「太平記」参照。)。また、平将門のさらし首が関東を目指し、空高く飛び去って、その首が途中で力尽き、地上に落下したことが、若干の人々に伝承されました。
天地異変が鎌倉時代に将門塚(平将門を葬った墳墓)の周辺で頻繁に起こったため、平将門は、神として祀られ、延慶2年(1309年)に神田明神に合祀されました。なお、神田明神を崇敬する人が成田山新勝寺を参拝することは、禁忌です。成田山新勝寺を参拝することは平将門の霊を苦しめるからだそうです。

4 豪勢な成田山新勝寺について
 私は成田山新勝寺に到着し、仁王門、大本堂、聖徳太子堂、三重塔、釈迦堂、額堂、光明堂、一切経堂、成田山公園及び平和大塔等を観ました。成田山公園は明治時代から徐々に拡張された新しい公園です。その成田山公園の中心にある高さ58mの平和大塔は、派手な朱色で遠目にも豪勢な建築物です。ローマ法王及び国家元首等の起草したメッセージを封印したタイムカプセルが平和大塔の下に埋設されており、2434年に開封される予定です。
護摩祈祷は毎日大本堂で行われます。真言宗の開祖である弘法大使空海が自ら一刀三礼(一彫ごとに三度礼拝すること)した、本尊の不動明王が大本堂の須弥壇に安置されています。白金製又は白金めっきであるような飾りが大本堂の護摩壇の天井から多数垂れ下がっていて、この大本堂は普通の寺では見られない豪勢な建築物でした。

5 成田山新勝寺の参拝者が日本で2番目に多い理由について
 その理由の一つは、参拝者への御利益が多いことです。成田山新勝寺の本尊は不動明王であり、成田山新勝寺は「お不動さま」と呼ばれます。家内安全、身体健全、当病平癒、商売繁盛及び工場安全等が成田山新勝寺の御利益に有ります。御護摩祈祷は毎日、6時、9時、11時、13時及び15時に、原則的に行われます。さらに、平将門調伏が行われた寺の起源が特殊であること、知名度が外国人に高いこと、及び珍しい行事が開催されること等は、成田山新勝寺への参拝者が多いその他の理由です。
私は、参拝者の5分の1程度が、タイ人らしいことを発見しました。日本語又は中国語以外のタイ語の記載が大本堂の入り口等にあり、成田山新勝寺はタイ人に親切です。また、成田空港が近いため、タイ人等の参拝のために便利な場所にあります。

6 珍しい、成田山新勝寺の節分会特別追儺(ついな)豆まき式について
 開運豆まき及び特別追儺豆まき式の、2種類の豆まきが、成田山新勝寺の節分会で行われます。追儺の儀式は当初、中国から導入された宮中の儀式でした。日本で最初に記録された追儺(導入初期に、「大儺(たいな)」と、呼ばれていた。) の儀式は、疫病の流行を防ぐために、慶雲3年(706年)に行われたものでした。宮中の追儺の儀式は中世以降に中止されましたが、民間の追儺の儀式は左程中止されませんでした。追儺の儀式は、日本への導入初期に旧暦の大晦日に行われましたが、追儺豆まき式は中世以降に立春の前日に行われています。鬼が成田山新勝寺の不動明王の前で改心するので、「鬼は外」の掛け声は成田山新勝寺の特別追儺豆まき式で行われず、「福は内」の掛け声だけがその豆まき式で行われます。このような掛け声が行われる寺は、日本で珍しく、稀有です。
日本放送協会の大河ドラマ出演者及び相撲力士は、昭和44年以降例年、成田山新勝寺の特別追儺豆まき式で豆まきを行っています。「軍師官兵衛」の出演者や横綱白鵬等が、平成26年の成田山新勝寺の特別追儺豆まき式で豆まきを行いました。成田山新勝寺の特別追儺豆まき式は、著名人が集まる点でも、珍しい行事です。

【参考文献】
 ・成田山新勝寺HP
 ・成田市節分会HP