レポート

2015年5月-Vol.228

まとめ

今月のポイント

20日に1‐3月期GDPが発表されます。昨年10-12月期は、2四半期連続のマイナス成長の後であり、前期比年率3%台後半の高い伸びが予想されていましたが、2.2%に止まりました(その後1.9%に下方修正)。1-3月期もプラス成長が見込まれていますが、米国では0.2%の伸びと予想を大きく下回っており、日本でこのまま回復傾向が続くかどうか、注目されます。

市場動向
国内債券 超長期ゾーンの国債発行増額と日銀国債買入れにより、低位で推移すると予想する。
国内株式 欧州リスクや米国景気への懸念のほか、決算発表での企業の保守的な計画への警戒感もあり、高値圏での揉み合い局面を予想する。
外国債券 <米国>5月初めのユーロ圏金利の上昇につれ米国金利も上昇した。利上げ見通しから金利に引き続き上昇圧力がかかるものの、相対的に金利水準の高い米国国債への買い需要は強く、当面上昇幅は限定的となろう。
<欧州>5月初めに金利が急上昇したがECB(欧州中央銀行)の国債買入れやギリシャ懸念は継続しており、落ち着いてくれば低位での推移となろう。ただし、当面は乱高下に注意が必要となるだろう。
外国株式 <米国>主要な経済指標のほか、減速感の継続する企業業績や原油価格動向などを材料に一進一退で横這いでの推移を予想する。
<欧州>米国景気の減速感の台頭でユーロの反転が見られるものの、中長期的なユーロ安の見通しから企業業績改善期待が継続すると予想するが、米国同様一進一退となるであろう。
為替市場 米利上げ見通しや、押し目でのドル買い需要の強さからドル高円安を見込むが、過度な動きに対する牽制から緩やかな円安となるだろう。ECBの国債買入れが継続されることやギリシャ懸念から、対ドルでユーロに緩やかな下落圧力がかかるだろう。
虫眼鏡

『横浜マラソン』

ポイント

20日に1‐3月期GDPが発表されます。昨年10-12月期は、2四半期連続のマイナス成長の後であり、前期比年率3%台後半の高い伸びが予想されていましたが、2.2%に止まりました(その後1.9%に下方修正)。1-3月期もプラス成長が見込まれていますが、米国では0.2%の伸びと予想を大きく下回っており、日本でこのまま回復傾向が続くかどうか、注目されます。

今月の主なポイント
5/11 ユーロ圏財務相会合・・・ギリシャ問題で進展がみられるか
5/20 1-3月期GDP速報・・・上記参照
5/29 4月全国CPI
・・・消費税率引き上げの影響が剥落してどの程度の伸びとなるか
4月鉱工業生産・・・製造工業生産予測調査では前月比+2.1%
消費者物価指数

国内債券

指標銘柄/新発10年国債
4月の国内債券市場

4月の債券市場は上昇(金利は低下)した。10年国債利回りは、月初、警戒されていた10年債入札が順調に消化したことを受けて0.3%台前半まで低下した。その後も、日銀による国債買入れや国債入札を順調に消化したこと、海外長期金利の低下の影響を受け、0.3%割れまで低下した。月末にはポジション調整からやや上昇し0.325%で終了した。

10年国債利回りは、月初、10年債入札が順調に消化されたことや予想を下回る米国雇用統計を背景に0.3%台前半まで低下した後、株価の上昇もあり0.3%半ばを中心としたレンジ内で推移した。その後は、30年債入札が順調に消化され、5年債、20年債入札も無難な結果となったことや海外長期金利が低下基調を強めていたことから、長期金利は一時0.3%近辺まで低下した。月後半は、40年債入札への警戒感から金利は一時上昇したが、欧州でのギリシャ情勢への懸念や弱い米国経済指標を受けて、金利は0.2%台後半まで低下した。月末にはポジション調整からやや上昇し0.325%で終了した。

イールドカーブは、カーブ全体が下方にシフトし、特に長期ゾーンの低下幅が大きかった。

信用スプレッドは、概ね横這いで推移した。

5月の国内債券市場

日本経済の回復ペースが緩やかであることから、金利上昇圧力は緩やかになるだろう。一方で、ECB(欧州中央銀行)による量的金融緩和策、米国経済指標の下振れ、外国人投資家による本邦債券市場への資金流入を受けて、世界的に金利低下圧力がかかりやすいことや日銀の国債買入策から、金利は低位で推移すると予想する。

5月の債券市場のポイントは、①日銀の国債買入策の影響、②米国景気回復の鈍化、③ギリシャ情勢と考える。

①(日銀の国債買入策の影響)日銀の国債買入策により金利には低下圧力がかかりやすいものの、流動性が低下しており、ボラティリティの高まりには注意が必要だ。

②(米国景気回復の鈍化)FOMC(連邦公開市場委員会)が景気判断を下方修正し、今後の景気回復の不確実性が高まっている。一方、弱い景気の背景にある天候要因などが剥落すれば指標は上振れるという見方もあり、米国金利は上下に振れやすいだろう。この動きが国内債券市場の変動を高める可能性には注意が必要だ。

③(ギリシャ情勢)様々なヘッドラインが相場を動かす要因になると考えられるものの、ギリシャ政府の債務弁済能力に大きな改善は見られず、問題は長期化する可能性がある。目先、改革案が承認され、当面の資金繰りに目処がつくまでは、ボラタイルな金利の動きが続きやすい。

イールドカーブは、入札や日銀の国債買入れに対する投資家の思惑からスティープ化とフラット化を繰り返す展開を予想する。

信用スプレッドは、概ね横這いで推移すると予想する。

国内株式

日経平均株価225種東証株価指数(TOPIX)
4月の国内株式市場

4月の株式市場は、外人投資家を中心に日本株を買う動きが活発となり、日経平均株価で1.63%と4ヵ月連続の上昇となった。月初は日銀短観の内容が弱かったことなどから調整する局面もあったが、堅調な米国株や円安の進行を受け、企業収益の拡大期待から好業績銘柄を中心に買われ上昇した。中旬以降は中国の預金準備率の大幅引下げの発表が好感されたことや、日銀の追加金融緩和への期待などから15年振りに20,000円の大台を回復するなど高値を更新する動きとなった。月末にかけては日米の決算発表を控え様子見ムードが強まる中、ギリシャのデフォルト懸念が再燃したことや、1-3月期のGDPの減速を受け米国景気の先行きに不透明感が高まったことなどから上値の重い展開となり、利益確定の売りが優勢となった。

業種別には、鉱業、石油・石炭、パルプ・紙などが上昇する一方で、金属製品、医薬品、精密などが下落した。

5月の国内株式市場

5月の株式市場は、日本企業の業績拡大や資本効率改善への期待が強いことなどから大幅な調整は想定しづらいものの、欧州リスクや米国景気への懸念のほか、決算発表での企業の保守的な計画への警戒感もあり高値圏での揉み合い局面を予想する。

企業の3月期決算の発表が本格的に始まっている。概ね業績は好調に推移しているものの、足元で円安の進行が一服していることや外部環境が不透明なことなどから輸出関連企業を中心に今年度の会社計画は市場の事前のコンセンサス予想を下回る企業が多く、これを受けて株価が急落する銘柄が目立つ。株主還元の強化策の発表などは好感される動きも見られるものの、決算発表が一巡する中旬頃までは個別企業の公表内容に一喜一憂することとなろう。また、4月までの株価の上昇によりバリュエーション面では海外の株式市場との相対的な割安感が薄れつつあり、短期的には更に上値を追っていく展開にはなりづらいと思われる。

一方、騰落レシオや移動平均からの乖離率などのテクニカル指標からは過熱感は薄れつつある。また世界的な金融緩和を背景に日本企業の変革に期待した外人投資家による積極的な買いが続いており、株価が下落する局面では年金基金や公的資金などの下支えも期待されることから、需給面では良好な状況が続くことが予想される。米国の利上げを巡る株式市場の混乱や、中東発の地政学的リスク、欧州問題の再燃などには注意が必要と思われるが、こうした海外情勢に大きな波乱がない限り、大幅な調整の可能性も低いと見ている。

外国債券

米10年国債ドイツ10年国債
4月の米国債券市場

4月の米国の長期金利は上昇した。10年国債利回りは月初1.9%台前半で始まったが、予想を下回った雇用統計を受けて1.8%まで低下した。その後は、株や原油価格が上昇する流れで金利は上昇基調となったが、ギリシャの資金繰りへの警戒感が高まったことや、小売売上高など相次いで弱い経済指標が発表されたことから低下に向かった。ただし、下値も限定的で1.8%台後半を中心にレンジ内推移となった。下旬以降は、ギリシャ支援を巡る交渉が進展するとの期待や、大型の社債発行が続いたことによる需給懸念、欧州金利の急騰の影響などから金利は再び上昇基調となった。予想を下回った1-3月期のGDPなど弱い経済指標で下押しする場面もあったものの2%を超えて上昇し、月末には一時2.1%台を付けたが、その水準では買い戻しが入って2%近辺で引けた。

4月の欧州債券市場

4月の欧州(ドイツ)の長期金利は上昇した。月初ドイツ10年国債利回りは0.1%台後半で推移していたが、ギリシャの資金繰り懸念に加え、15日のECB(欧州中央銀行)理事会で、ドラギ総裁が量的緩和策の早期終了観測を否定したことで、改めて国債買入れの継続が意識されて金利低下が加速した。一時9年の金利までがマイナス利回りとなり、17日には10年国債利回りが過去最低水準となる0.049%を付けた。しかし下旬にかけては、今までの急速な金利低下を巻き戻す動きや、ギリシャの資金繰りが短期的には目途がついたとの見方と支援交渉に進展が見られるとの期待感、3月のM3データが予想以上の伸びを見せ量的緩和策の景気への効果が期待されたことなどを材料に、量的緩和策が開始された時期の水準となる0.3%台後半まで一気に上昇して引けた。

5月の米国債券市場

米国10年国債利回りは5月初め、急騰するユーロ圏の金利の動きにつれて一時2.3%まで上昇した。しかしその水準では買い戻され、更に4月の雇用統計はほぼ予想通りとなったものの、3月の雇用者数が下方修正されたことや、賃金の伸びが予想に届かなかったことから2.1%台まで低下するなど荒い動きを見せている。足元、一時的な要因で景気の弱さが意識されるが、これらの要因の解消後は労働市場の改善と堅調な消費に支えられて再び回復基調に戻り、今年半ば以降の利上げ開始を予想するため、長期的には金利は上昇すると見込む。ただし、一旦相場が落ち着きを見せ、今後ECBの国債買入れによってユーロ圏の金利が低位に抑えられれば、米国国債に対する買い需要は強くなるため金利は上がりづらくなろう。引き続きユーロ圏の金利に影響されやすい展開も見込まれるため、同相場の動向を注視する必要があろう。

5月の欧州債券市場

ドイツ10年国債利回りは、今までの金利の大幅な低下の巻き戻しの動きなどから、4月末以降上昇基調となり、5月初めには一時0.7%台後半まで上昇した。しかしその水準では買い戻されて0.5%台半ばまで低下するなど荒い動きを見せている。ユーロ圏経済は、原油安やユーロ安の恩恵などによってドイツを中心に緩やかに持ち直しているものの、ECBの国債買入れは継続される予定であり、加えてギリシャ懸念も燻り続けている。一旦相場が落ち着いてくれば金利は低位に抑制される展開を見込むが、足元の一方的な金利低下のスピード調整から、金利が乱高下するリスクには引き続き注意が必要であろう。

外国株式

米国S&P500指数ダウ工業株30種平均ドイツDAX指数イギリスFT-SE(100種)指数香港ハンセン指数
4月の米国株式市場

4月の米国株式市場は、S&P指数で0.85%上昇した。米国の需給改善期待を背景に原油価格が上昇したことから、エネルギー関連銘柄主導の上昇となった。予想を下回る経済指標で利上げ時期の後退観測に加え、1-3月決算は減益ながらも事前の予想に比べて改善傾向を示したことから堅調な推移となり、ナスダック総合指数は史上最高値を更新する局面もあった。その後は、予想を下回る1-3月のGDP速報値などが懸念されて売りが先行した。セクターでは、エネルギー、電気通信サービス、素材セクターなど景気敏感セクターが上昇する一方、ヘルスケア、生活必需品、公益などディフェンシブセクターが下落した。

4月の欧州株式市場

4月の欧州株式市場は、量的緩和継続を受けて欧州圏の経済指標が改善を示す中、業績改善への期待感が強まりドイツ市場を中心に史上最高値を更新した。その後は、需給改善期待から原油市況が上昇したほか、予想を下回る米国の経済指標でユーロの反転もあり、売りが先行し米国市場をアンダーパフォームした。国別では、ポルトガル、オーストリア、ノルウェーなどが買われた一方、ドイツ、ベルギー、スウェーデンなどが売られた。セクターでは、エネルギーが大きく買われたほか、電気通信サービス、公益が上昇し、情報技術、一般消費財・サービスなどが売られた。

4月の香港株式市場

4月の香港株式市場は、13.0%の上昇となった。主要経済指標の下振れが続く中国で、中央銀行による預金準備率の引き下げの実施や景気刺激策への期待が強まり、中国本土や香港市場中心に大幅に上昇した。月末にかけて米国の下落を受け売られたものの、他市場を大幅にアウトパフォームした。

5月の米国株式市場

5月の米国株式市場は、主要な経済指標動向によって振れる政策金利の引き上げタイミングを巡る投資家センチメントのほか、ドルの方向性、原油価格動向などを材料に一進一退でレンジ内の動きを予想する。

5月の欧州株式市場

5月の欧州株式市場は、量的緩和継続のほか、米国を上回る増益率が予想される企業業績動向、反転したユーロ動向、英国総選挙などを材料に、米国同様に一進一退の展開を予想する。

5月の香港株式市場

5月の香港株式市場は、中国の景気減速懸念や高値警戒感などにより上値は重いと思われるが、中国人民銀行の追加金融緩和への期待や「一帯一路」計画などのインフラ事業関連への期待も強く、市場の下支え材料となろう。

為替動向

為替(ドル/円)為替(ユーロ/円)
4月のドル/円相場

4月のドル/円相場は、ややドル安となった。ドル/円は月初120円台で始まったが、3日に発表された米国雇用統計が市場予想よりも悪かったため、イースター休暇で参加者が少ない中、一時118円台まで下落した。その後は、米国景気の緩やかな回復見通しとFRB(連邦準備理事会)による年内利上げ観測に変化がなかったため、ドルが買い戻され120円台に戻った。中旬にかけては、市場予想を下回る米国経済指標の発表が続いたため再び118円台まで下落した。下旬には一時120円台をつける場面もあったが、月末にかけても市場予想を下回る米国経済指標の発表が多かったことから売られ、119円を挟んだ動きが続いた。29日のFOMC(連邦公開市場委員会)声明文では、現状の景気認識は下方修正されたが、6月利上げの可能性が排除されなかったため、ややタカ派的と捉えられた。しかし同日発表された1-3月期の米GDPが市場予想を大きく下回り、強弱の材料が拮抗する形となったため、水準は大きく変わらなかった。30日の日銀金融政策決定会合で、一部に期待のあった金融緩和が実施されず現行の金融政策を変更しなかったため、円が買われる場面もあったが、119円台半ばで引けた。

4月のユーロ/円相場

4月のユーロ/円相場は、ユーロ高円安となった。月初は130円を挟んだ動きで始まったが、ECB(欧州中央銀行)による国債買入れにより欧州長期金利の低下基調が継続したことや、ギリシャ支援交渉が進展しないことなどからユーロも下落基調が続き、対ドルでは1.05近辺まで、対円でも126円近辺まで売られた。15日のECB理事会後の会見で、ドラギ総裁が一部で観測のあった量的緩和早期縮小を否定し、予定通り量的緩和を継続することを明言したが、ユーロの下落が限定的であったことや、予想を下回る米国経済指標が多かったことからユーロは買い戻された。下旬から月末にかけては、ドラギ総裁が過度のユーロ売りをけん制したことや、米国の1-3月期のGDPが市場予想を大きく下回ったことなどから対ドルで1.12台まで、対円でも134円台まで戻して引けた。ドルに対してユーロが大幅高になった一方で、円は小幅高に止まったためユーロ/円はユーロ高円安となった。

5月のドル/円相場

5月のドル/円相場は、緩やかな上昇を予想する。米国経済指標は予想を下回るものが多いが、4月のFOMCでは悪天候など一時的な要因とされ、金利の正常化は今後の経済指標次第とする姿勢に変化はなかった。足元ドルは弱含んでいるが、米国経済の緩やかな回復と今年半ば以降の利上げ開始見通しに変わりはなく、押し目での本邦投資家のドル買い需要も強いため、円安ドル高基調が継続する展開を見込む。ただし、過度な円安進行に対する牽制の動きや、ドル高による米国経済への悪影響が今以上に大きくなった場合には円が買われる可能性があるため、注意が必要となろう。

5月のユーロ/円相場

4月末以降の長期金利上昇に合わせて、ユーロも買い戻された。ユーロ圏経済は緩やかに持ち直しているが、ECBの国債買入れはインフレ目標の達成が見通せるまで継続されるため、利上げ開始が視野に入っている米国との金融政策対比や、米独金利差から引き続きユーロ売りドル買いの流れは続くだろう。ギリシャ支援交渉を巡る懸念もユーロに下落圧力をかけるだろう。ユーロの買い戻し一巡後は再びドルに対して弱含む展開を想定している。円もドルに対して弱含む展開を想定しているが、ユーロの低下幅がやや大きくなると思われるためユーロ/円相場は小幅のユーロ安円高となろう。

虫眼鏡

横浜マラソン

2015年3月5日日曜日、横浜で初めての市民参加型のフルマラソン大会である「横浜マラソン2015」が開催されました。当日自分は他人事でなく、テレビの生中継で「誰か知っている人が映るかもしれない」と思い、スタートを待つ25,000人のランナー達の様子を観ていました。

 横浜マラソンは、1981年より過去33大会、ハーフと10kmの種目で競われてきました。「横浜でフルマラソンを」という市民からの熱い要望と署名活動から始まり、行政もシティセールス効果や経済波及効果を期待して準備を進め、2013年11月、フルマラソン大会として生まれ変わることが正式に決まりました。2014年3月に決定されたそのコースは、みなとみらい大橋をスタート後、赤レンガ倉庫、横浜三塔、中華街、三渓園などの観光名所を通り、横浜市中央卸売市場南部市場を折り返した後は、目玉とされる首都高速道路湾岸線を約10km、本牧ふ頭まで走るという、横浜ならではの風景を満喫できるコースです。とは言え、半年前の自分はマラソンに興味はなく、横浜に数年間住んでいながらこの大会の存在を知りませんでした。

スタートから4時間近くが経過した時、思わぬ人物を発見しました。画面には男性の上位入賞者の表彰式の様子が映し出され、その壇上には自分がお世話になっているランニングコーチ、Kさんの姿がありました。見ながら、驚くと同時にテレビに向かって拍手を送っていました。

 自分がランニングを始めたのは昨年10月、あるジョギングプログラムに参加したのがきっかけでした。ジョギングに関心があったわけではなく、したこともありませんでしたが、毎週平日の夜に、ライトアップされた横浜港周辺で行われていることを知り、一度その景色を見に行こうと考えたのが始まりでした。そこでA・B・Cと分けられているチームのうち、一番基礎レベルの「Cチーム」に入ることにしました。練習コースは片道約5kmの往復ですが、途中歩いても止めてもOKとの確認を取り、安心して初ジョギングの日を迎えました。

20数名の参加者とともに、コーチに従い準備運動を終えて走り始めると、頭がズキズキしてきて重く、前日の飲酒のせいではないかと思いました。足もだるく早くも止めたくなりましたが、年配の方や少々体重オーバー気味に見える方も、楽しくおしゃべりをしながら走っています。そこで周りの人と話し始めると、皆「何か大会に出るのですか?」と聞いてきます。こちらは勿論そのつもりはないのですが、参加者の間では、横浜マラソンや三浦国際市民マラソンが話題で、エントリーしたとか、抽選で落ちてしまったといった話で盛り上がっていました。

港の夜景はいつ見ても良いものです。横浜駅を出発してみなとみらい地区に入り、観覧車や赤レンガ倉庫の前を通過し、大桟橋、山下公園へと景色が変わっていきました。そのうち、あんなに遠くに見えていたマリンタワーまで来てしまったと思うと、帰りはどうなるのか、と不安がよぎりました。次第に景色を楽しむ余裕はなくなり、息を切らしながら急な坂道を上ると、ついに折り返し地点の港の見える丘公園に到着しました。言うまでもなくここからの眺めは最高なのですが、この時には、自分は想定外の靴擦れと、膝と股関節の痛みに直面していました。復路に入り、伴走スタッフのIさんに症状を伝えると、心配して途中から一緒に歩いてくれることになりました。すると、同じく歩いていて群れから外れてしまった人が合流してきました。Tさんという方、年齢は50代後半の男性で、8月からCチームに入って以来毎週来ていると言います。その理由は、「横浜マラソンに当選してしまったから・・」だそうで、走り始めてから体重が10キロ以上落ちたとのことでした。少し疲労が回復してきたところでジョギングを再開し、3人で横浜駅に戻りました。立ち止まると、頭がガンガンして体中が火照り、気持ちの良くない汗が流れてきました。その昔、部活で激しい運動をさせられた時のことを思い出す様な状況でした。

走るつもりはなかったのですが、新しいことを始めるのには良い機会だったのかも知れません。その後、ランニングシューズや膝をサポートするスポーツ用タイツなどのグッズを揃え、Cチームへの参加を続けました。今ではここで走る機会があることに、毎回感謝する気持ちです。また別の曜日でベテランのKコーチが担当するランニング教室があり、皆さんのお薦めに従い参加しました。そこで、足運びを楽にするようなトレーニング方法などを教えられ、更に映像に収められた自分のフォームを解析してもらうと目から鱗の思いで、走るのが少し楽になってきました。普段歩いている時やデスクワークをしている時にも、教わった骨盤や背筋の位置を意識する様になりました。

最初はそのつもりはなかったものの、12月中旬のある日、どこかで聞いた「渋谷・表参道Women’s Run」というマラソン大会のサイトを見ていると、参加申込みの期限が間近となっており、取りあえずポチッと申込みボタンをクリックしました。公園通りや表参道、明治神宮の境内などを走る10kmのコースが魅力的な、女性限定の大会です。抽選方式で外れる可能性もあったのですが、しばらくして当選との通知が来ました。そこで、本番を前に足を慣らしておこうと思い、近場で開催される大会を見つけ、エントリーしました。

結局、3月に3つの大会に参加しました。初レースは、三ツ沢公園陸上競技場で行われたファミリーマラソン大会でした。親子で参加する種目や小学生の部などから始まり、楽しく観戦した後、出番の10km・一般の部となりました。横浜らしく丘陵地にある公園です。公園の周回がメインのコースでアップダウンがきつく、上り坂が来る度に歩こうと思い、もう限界だと思った頃に坂が終わる、の繰り返しでヘトヘトでしたが走り終えました。足慣らしとしてはハード過ぎる大会でした。シューズに付けていたICチップを返却すると、その場で完走証が発行されました。そこに記録された順位とタイムを見ていると、「これがランナーのモチベーションにつながるのだろう」と感慨深い気持ちになりました。

メインの渋谷のマラソン大会は、華やかな女子の祭典でした。特別にデザインされた参加賞のTシャツを着て、会場の代々木公園に向かいました。そこでは、多くのスポンサー企業のブースが出展され、ランナーは化粧品や飲料を始めとするサンプル品などがもらえます。スタート地点では、瀬古利彦さんや荒川静香さんが壇上で手を振り、アナウンスが場を盛り上げていました。道中も、和太鼓のパフォーマンスや多くの人が応援に来ているのを見ていて飽きることなく、参加してラッキーな大会でした。

3月最後の日曜日に参加した大会は、お馴染みの赤レンガ倉庫を基点とするコースを周回するものでした。そのとき開催中だった「フラワーガーデン」が美しかった他は、あまり新鮮味がありませんでしたが、見通しの良い平坦なコースを黙々と5周しました。完走証受け取って見ると、1周毎のタイムも記録されていました。途中調整してペースダウンしたことがわかり、各周で数秒ずつタイムを縮められたらトータル1時間を切れたはず、などとイメージしていました。

横浜マラソンが終わった週の水曜日、Cチームの参加者は10名と通常の半分以下になっていました。それでも、横浜を走った人が3名、ボランティアのスタッフを務めた人が1名、現地で応援した人が1名いました。Tさんもその一人で、知らなかった走行中のトイレ事情の話など楽しく聞き、そして「5時間以上かかって完走したけど、最後は足が棒の様になり、まだ体のあちこちが痛い。でも達成感はあったし、自信につながった」との感想を聞くことができました。一方で、Kコーチは自分の成績に満足していなかったことがわかりました。Tさんの例もあり、スタッフのIさんからは「来年は横浜マラソンですよ。まずはハーフの大会から出てみては?」との声が。いやいや「私の横浜マラソンはCチームで十分です」が今の自分の気分です。実際レースとなると疲れ方が違うもので、あまり無理をするとストレスが溜まりそうです。今回の横浜でフルマラソンデビューした女性に「何故?」と聞いたところ、こんな答えが返ってきました。「ポチッとしたら、行くしかないですから!」

さてこれからは、ステップアップを目指して練習するのか、ポチッとしてから動き出すのかわかりませんが、マイペースで楽しく走り続けることができればと思っています。