コラム

Vol.28

SASBの「Engagement Guide」のESGエンゲージメントを紹介する第7回目の今回は、「資源加工セクター(Resource Transformation)」から「化学(Chemicals)」関連企業とのエンゲージメントテーマについて取り上げます。

化学業界に属する企業は、有機化合物および無機化合物を加工して、工業製品、医薬品、農薬、日用品といった幅広い用途をもつ多様な製品を製造しています。また、この業界は、グローバルに製品を製造・販売しており、一般的に3つの小業種(基礎化学、農薬、特殊化学)に分けられています。化学業界は、主に他の製造業や同業企業に自社製品を販売する一方、需要に関しては、景気や工業生産量、建設、個人消費に大きく左右されます。さらに、この業界に属する企業は、効率性やスケールメリット、画期的な製品の開発にしのぎを削っています。そして現在、化学業界は、環境負荷や安全性、更には効率性を高める製品といった、非常に多くの持続可能性に関する課題や機会に直面しています。

化学業界のエンゲージメントテーマは、「環境」「ビジネスモデル&イノベーション」「リーダーシップ&ガバナンス」「その他考慮事項」で構成されています。

「環境」では、「温室効果ガス排出」「大気環境」「エネルギー&原料管理」「水管理」「有害廃棄物管理」の5つのテーマが取り上げられています。「温室効果ガス排出」では、「企業が現在および将来において直面する温室効果ガス排出に関する規制はどのようなものか?」そして「スコープ1の排出を削減するための戦略は何か?」という点に焦点を当てています。 「大気環境」については、「有害であるとして規制されていたり、もしくは有害であると見なされている大気汚染物質の排出を削減するために、どのような戦略を実行しているのか?」、そして「人口密集地に近い施設がこれらの戦略にどのように作用しているのか?」という点を取り上げています。「エネルギー&原料管理」に関しては、「どのような手順でエネルギー効率の向上や再生可能エネルギー使用の割合を増やすのか?」、そして「再生可能資源から生成される原料の使用量を増やすため、どのような戦略を用いているのか?」という点に着目しています。「水管理」については、「企業は、どの程度水不足の影響を受けやすいか?」、そして「水ストレスのある地域において水の使用をどのように管理しているのか?」という点でのエンゲージメントが求められています。「有害廃棄物管理」では、「有害廃棄物の主な出所はどこなのか?そして、こうした廃棄物を減らすための戦略とはどのようなものか?」という点と、「どのような施策を通じて流出の管理や防止を行っているのか?」について注目しています。

「ビジネスモデル&イノベーション」では、「化合物・遺伝子組み換え生物に対する安全面・環境面における受託者責任」および「使用時の効率性を高めるための製品設計」の2つをテーマとしています。「化合物・遺伝子組み換え生物に対する安全面・環境面における受託者責任」については、「現在規制されていたり、強く懸念されている化合物に対する製品の影響度合いはどれくらいか?」、そして「環境および人体への健康に与える潜在的な影響を低減することができる代替製品を開発することについて、企業はどのような考え方を持っているか?」「企業は、GMO製品の需要に影響する規制当局や消費者の動向についてどのような見解をもっているのか?」について着目しています。「使用時の効率性を高めるための製品設計」については、「効率性を上げるための製品需要に関連する潜在的機会を捕えるための戦略とは何か?」という点に焦点を当てています。

「リーダーシップ&ガバナンス」においては、「政治的支出」と「健康、安全および危機管理」の2つをテーマとしています。「政策投資」については、「企業は長期的な事業の成功と持続可能性がもたらす結果が一致していることをどのようにして保証しているのか?」について焦点をあてています。「健康、安全および危機管理」については、「正規社員や契約社員の緊急あるいは持続的な安全衛生管理に関する企業の最大の課題は何か?そして、そうした課題をどのように管理しているのか?」をエンゲージメントの題材としています。

「その他考慮事項」については、「報告義務のあるセグメントごとの生産量」が挙げられます。