コラム

Vol.38

SASBの「Engagement Guide」のESGエンゲージメントを紹介する第18回目の今回は、「インフラ(Infrastructure)」セクターから「エンジニアリングおよび建設サービス(Engineering & Construction Services)」関連企業とのエンゲージメントテーマを取り上げます。

エンジニアリングおよび建設サービス業は、設計、コンサルティング、請負、建設、エンジニアリング、その他の関連サービスを提供して様々な建物やインフラ計画をサポートしています。また、この業界は、インフラ建設、非居住建築、エンジニアリングサービス、建設請負業者および建設関連専門サービスの4つの主要セグメントで構成されています。

インフラ建設部門は、発電所、ダム、石油・ガスのパイプライン、精製所、高速道路、橋梁、トンネル、鉄道、港湾、空港、ごみ処理施設、水道施設、スタジアムといったインフラ計画の設計・建設に携わる企業が含まれています。非居住建築部門については、工場や倉庫、データセンター、オフィス、ホテル、病院、大学、更にはショッピングモールのような小売りスペースといった工業施設および商業施設を設計・建設する企業が含まれています。エンジニアリングサービス部門に関しては、上記の多くのプロジェクトの実現可能性調査の設計・開発といった建築サービスやエンジニアリング専門のサービスを提供する企業が含まれています。最後に、建設請負業者および建設関連専門サービス部門においては、大工、電気、配管、塗装、防水、造園、インタリアデザイン、建築検査などの付帯的なサービスを提供する小規模の企業が含まれています。

この業界の顧客は、公共及び民間部門のインフラ所有者や開発者を含んでいます。この業界に属する大手企業は、グローバルに事業を展開し収益を上げ、複数の部門に専従しているのが一般的です。

エンジニアリング&建設サービス業界のエンゲージメントテーマは、「環境」「社会資本」「人的資本」「ビジネスモデルおよびイノベーション」「リーダーシップおよびガバナンス」「その他考慮事項」で構成されています。

「環境」については、「プロジェクト開発における環境影響」をテーマとし、「開発計画において、水の使用量や大気への排出物、生物多様性の損失などを含む生態学的影響(およびそれに関する許容リスク)を管理するための企業戦略とはどのようなものか?」という点をエンゲージメントで取り上げています。

「社会資本」に関しては、「構造上の健全性と安全性」を取り上げ、「顧客のために設計・建設する建造物が最大限に機能を発揮することを保証するために、企業はどのような活動に取り組んでいるのか?」そして、「企業は、プロジェクトの失敗や欠陥に関連する債務リスクをどのように管理しているのか?」という2点に焦点を当てています

「人的資本」に関しては、「労働者の健康と安全」に注目し、「従業員や請負業者の安全衛生に取り組む際、企業はどのような役割を果たしているのか?そして、どのようにして強固な安全文化を醸成しているのか?」という点を確認しています。

「ビジネスモデルおよびイノベーション」については、「事業内容における気候影響」「建物とインフラのライフサイクル影響」をテーマとし、「事業内容における気候影響」に関しては、「企業は、炭素税や温室効果ガス排出制限といった潜在的な規制の流れの中で、炭素エネルギープロジェクトへの関与をどのように考えているのか?そして、炭素エネルギーに絡む契約の中に、特定のリスク分担の要素を取りいれているか?」という点に注目しています。一方、「建物とインフラのライフサイクル影響」については、「開発や計画の段階で、企業はどのような資源効率化の設計サービスや機能を提供しているのか?企業は、資源効率化に関する能力を潜在的な競争優位性であると考えているのか?」また、「企業は、設計・建設の検討段階において、どのような第三者基準を使用しているのか?」という2点を取り上げています。

「リーダーシップおよびガバナンス」については、「ビジネス倫理および入札の健全性」をテーマとし、「汚職の多い地域への関与度合いはどの程度か?そして、政府への支払いを含むバリューチェーン全体を通して、汚職や贈収賄を防止するための企業の戦略とはどのようなものか?」という点に着目しています。

「その他考慮事項」に関しては、「進行中のプロジェクトの数」、「委託プロジェクトの数」、「総受注残」の3つが挙げられています。